被せ物による治療
以前に比べ、虫歯の治療では極力歯を削ることなく白い樹脂
（コンポジットレジン）等で治療する機会が増えています。
しかしながら、全ての場合でレジンによる治療が可能なわけではありません。
修復範囲があまり大きいとレジンで形態の再現が行えず、被せ物
（インレーやクラウン）で処置しなければならない場合が今でも多くあります。
歯を削って被せる治療は、選ぶ素材によって仕上がりに大きな差が生じます。
素材の色や価格だけをみて被せ物を選びがちですが、それぞれどのような特徴が
あるのかを理解して選択するほうが、納得いく治療結果につながる傾向にあります。
少し長い解説になりますが、以下を是非ご一読下さい。
被せ物を選ぶ際に
考慮すべき要素
考慮すべき要素は5つです。
- 費用 治療費が高いか安いか。
- 審美性 白色か金属色か。白色の中でも天然歯の色調をいかに再現できるか。
- 適合性 被せ物がどれくらい隙間なく歯にフィットしているか。
- 耐久性 材料自体の壊れにくさ。
- 生体親和性 汚れのつきにくさ。周囲組織への馴染みやすさ。アレルギー反応のおこしづらさ。
一般的に皆さんが気にされるのは、①費用と②審美性ではないでしょうか。
近年では保険内治療においても白い材料の適応範囲が広がりました。
また、治療が長持ちするかどうかに関与するのは、
③適合性、④耐久性、⑤生体親和性の３要素です。
被せ物の処置はやり直しの度に歯に負担がかかるため、
行える治療回数に限度があります。
そのため、１回１回の治療をできる限り長持ちさせることが大切です。
では、①〜⑤全てを兼ね備えた、素材・治療法は存在するのでしょうか？
残念ながら、答えは「NO」です。
安価で、審美的かつ長持ちをする治療法は現状においては存在しません。
ですから患者さんには各治療のメリット、デメリットを理解した上で、
納得のいく選択をしていただきたいと考えています。
その一助となるように、伴歯科診療所で行っている治療の
選択肢とそれぞれの特徴を以下に整理してみました。
被せ物の種類とその特徴
被せ物は、部分的に歯を修復する詰め物（インレー）と歯全体を覆うもの（クラウン）に大別されます。
01
インレー
メタルインレー12%金銀パラジウム合金
一般的に銀歯とよばれる部分的な金属の詰め物です。
保険内で行うことが可能な処置となります。
強度は十分ですが、金属色のため審美性に劣ります。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応 | × | △ | △ | △ |
CAD/CAMレジンインレー
樹脂製の白い詰め物です。
保険内で行うことが可能な処置となります。
奥歯にも使用可能ですが、強度があまり高くないため、
力が強くかかる部分に使用することはできません。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応 | ◯ | △ | × | △ |
ゴールドインレー金合金
高純度の金合金を使用した詰め物です。
保険適応外治療となります。
金属色のため審美性はに難はありますが、適合性・耐久性に優れます。
噛み合わせの強い方、機能性を重視する方におすすめです。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応外 | × | ◎ | ◎ | ◯ |
セラミックインレー
高強度セラミックを使用した詰め物です。
保険適応外治療となります。
審美性・生体親和性に優れ、
自然な仕上がりすることが可能です。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応外 | ◎ | ◯ | ◯ | ◎ |
ハイブリッドレジンインレー高強度レジンインレー
樹脂とセラミック粒子を高密度に混合した素材を使用した詰め物です。
保険適応外治療となります。
セラミックインレーに比べ擦り減りやすい傾向はありますが、
価格・審美性・耐久性のバランスが取れた治療です。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応外 | ◯ | ◯ | △ | ◯ |
02
クラウン
メタルクラウン12%金銀パラジウム合金
一般的に銀歯とよばれる金属の被せ物です。
保険内で行うことが可能な処置となります。
強度は十分ですが、金属色のため審美性に難があります。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応 | × | △ | △ | △ |
レジン前装メタルクラウン12%金銀パラジウム合金
メタルクラウンの表側のみを樹脂で白くコーティングした被せ物です。
保険適応外治療となります。
前歯に限定して保険内で行うことが可能な処置となります。
セラミックほど歯の色調再現性は難しく、経年的な着色が生じます。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応 | △ | △ | △ | △ |
CAD/CAMレジン冠
樹脂製の白い被せ物です。
保険内で行うことが可能な処置となります。
奥歯にも使用可能ですが、強度があまり高くないため、
力が強くかかる部分に使用することはできません。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応 | ◯ | △ | × | △ |
ゴールドクラウン金合金
高純度の金合金を使用した被せ物です。
保険適応外治療となります。
金属色のため審美性に劣りますが、適合性・耐久性に優れます。
噛み合わせの強い方、機能性を重視する方におすすめです。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応外 | × | ◎ | ◎ | ◯ |
オールセラミッククラウン
金属を使用しないセラミックの被せ物です。
保険適応外治療となります。
ジルコニアを使用したもの、高強度セラミックを使用したものなど
特性によって様々なカスタムが可能です。
審美性、機能性ともに高く、経年劣化しにくいという特徴があります。
| 費用 | 審美性 | 適合性 | 耐久性 | 生体親和性 |
|---|---|---|---|---|
| 保険適応外 | ◎ | ◯ | ◯ | ◎ |
